喜劇王への手紙 ―追悼・志村けん―/服部 剛
を消した、僕は
お笑いのヒーローがもういないことを
寂しく思い外へ出て
すでに日付の変わった
満月の夜をそぞろ歩いた
――加藤茶さんがテレビで弔辞を読んだように
今頃、あちらで再会したいかりやさんと
一杯やっているのでしょうか
寂しげに歩く僕の
かなしみをほぐそうと
電信柱の影から
白ぬりのバカ殿はあらわれて
――だいじょぶだぁ
の、あの声が
葉桜の風にゆれる
今宵の空に響きます
サヨナラするのはつらいけど
時間が来たから、また会う日まで
明日の夜も、僕は息子を寝かせつつ
――だいじょぶだぁ
を繰り返し、そっと頭をなでるでしょう
追伸:日本を代表するコメディアンの志村けんさん、
僕が子供の頃から、たくさん笑わせてくれて、
ありがとうございます。あなたの命を決して無駄にせず、
コロナの状況を必ずや皆で乗り越え、その後の日々で、
あなたの優しさと笑いが人々に語り継がれてゆきますように。
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