沈丁花の妖精/丘白月
いい匂いだね
春の香りがするね
子どもたちが見上げていく
路地の垣根を越えて
ジンチョウゲの花が
朝焼けに赤く染まる
朝の窓辺に
香りが届けられる
遠く離れたあなたの街へも
白く清らかな花びら
妖精の羽根のように
光が抜ける美しい葉
眠っていた虫たちも
香りに誘われて歩き出す
雛人形も一年ぶりの
懐かし香りに涙する
障子戸に映る
ジンチョウゲの影に
雛人形が頭を下げる
妖精が雛人形と
初めて逢った日も
香りが部屋に満ちていた
遠い時を幾つも越えて
十二単衣に染み付いた香り
妖精の永久の愛の
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