クロッカスの妖精/丘白月
教室の窓が開けられ
春の匂いの風が
冬の空気を追い出す
窓辺に並べられた
小さな鉢に小さな願いが
込められている
妖精の透けて光る
白いワンピースが踊る
音楽室からピアノが聴こえる
春からやって来た風が
冬に話しかける
もうみんな冬の美しさに
感謝してるよ
子どもたちが毎日どれだけ
笑顔で遊んでいたか知ってるよ
紫色と黄色のワンピースが
風の中から降りてきて
三人で踊った
明日チョコを買う子が
クロッカスの花に言った
好きな子がいるんだよと
妖精は誰かを好きになる心が
一番好きだから
きっと心を届ける勇気を
その子に与えてささやく
大丈夫 心配しないでって
明日二人のクロッカスが
一番に咲いて言葉を交わすと
白と紫と黄色の花に
教室に校庭に妖精に
ピアノの音がいつまでも届く
春の色の音が
あの子好きな男の子が
誰かのために弾いている
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