冬のプラネタリウム/丘白月
 

海が見える丘の上に
プラネタリウムはあった

夏になれば毎晩のように
ハマナスの妖精が
屋上まで飛んできて
望遠鏡を覗こうとする

遠い遥か昔に
花の妖精になるその前まで
前世を探そうとする

冬は椿の妖精が
赤い花びらで
寂しそうな白い壁に
絵を描く

雪が降る日曜日に
二人の親子が
三十年前と同じ席に座る

ここにパパがいたのよ
今日はどっちに
座っているかな

愛した人は今はいない
帰りに花を買いましょうね
パパの好きなお花でしょ

冬の星座が今日もまた変わらず
ゆっくりと語りはじめる
アルテミスとオリオンの悲劇

月の女神が今夜
オリオンに逢いにいく

見上げる親子の手が
そっと握られ
ありがとう 
そう二人にだけ聞こえた

今夜は星を見ようか
パパの一番大きな望遠鏡で
うん パパも見えるかな

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