オルゴールの妖精/丘白月
冬休み最後の日
オルゴールがゆっくりと
視界に足跡をつけていく
私は一人ピアノの前に座り
昨日の夜 街灯の下に忘れた
温もりを何度も探してる
忘れたのではない
私は置いてきた
どんなに言いたくても
言えない言葉を置いてきた
オルゴールの音が
ピアノに溶けていく
妖精が弦のうえで
踊っているのだろう
オルゴールの妖精が
私に聴いてと言う
弾いてと言う
私は鍵盤に一つづつ
言葉を落としていく
妖精がここだよと
指を引っ張る
生まれた言葉を妖精は
オルゴールに優しく詰めていく
あした大好きなあの人に
渡せるように
戻る 編 削 Point(1)