夏の国/アラガイs
その昔夏の国からおちのびてきた春秋という餓鬼がいて
たちの悪いことにこの春秋という餓鬼は年老いても一向に死ぬ気配もない
今日も村人が集まる座敷に派手な女人を幾人も侍らせては酔い酒に戯れている
餓鬼とはいえやはり鋭い角のある鬼にはいちゃもんをつける輩は誰もいない
そこに冬将という新しく村にやって来た若者が餓鬼の様をみて筆をとる
口述噺には必ず英雄の伝説がある
(わたしは冬将という流れ者、あなたは何故それほど生き続けていられるのか。わたしならばこんな乱れた世にあって、それほど長く生き続けたいとは思いません。)冬将
木片を手にすると、春秋は酔い痴れながらも眉間を吊り上げ天を仰ぎ口を突き
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