妖精のドーナツ/
丘白月
秋に集めた椿の種が
ドングリと一緒に
引き出しの奥から出てきた
髪の長い妖精がやって来て
油にしましょうと言った
髪につけるの?と聞いたら
いいえと笑った
ドーナツを作ってあげる
そう言って笑った
フライパンに映る妖精は
美しい黒髪で宇宙にいるようで
やがて宇宙の底から
月が浮いてくる
どうぞ召し上がれ
一口食べると
ドーナツは三日月になった
いつの間にか妖精は
消えていた
黒い椿の種が一つ
テーブルの片隅にあった
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