足音もなく/もちはる
 
猫は
年の瀬も
明日の天気も
知らない

柔らかな毛は
小さな穴でも抜け出し
低く飛ぶ虫とあそび
羽が舞い上がると
あっさりあきらめて
ふらりと出かけては
いつの間にか帰り
自分の地図を知っている

窓辺で大好きな陽に
タプタプの腹を見せても
不意にさっと起き上がって
高い所に ひょいととび乗る
しっぽを自由にゆらして
女王のように気取り
足音もなく歩く

捨てた主を忘れても
夕日が沈むのをわかっている
出生は不明でも気にしない
寡黙でニャオしか言わず
ぼおっとしている私は
いつも見下されても
わがままな動きに
見とれている

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