優しい仕事、冬/AB(なかほど)
てくれた。
3
藻採り雪の近づくと
炉端できゅうきゅうと
支度をする祖母は
乙女に変わる
潮の滲みて来ないよう
きゅうきゅうと
生憎の戻り雪になるも
膝をさすりつつ
華の起つ藻場
の向こうを眺めている
4
まごころ屋が閉店になる。
やっていけなくなったのではなくて、もう後
継ぎができたのだ、と言う。けれどこの町の
誰も、その後継ぎのことは知らない。
まごころ屋は、壊れたオルゴールの小箱を眺
めながら、今度は、別離のテープの切ったり
貼ったり屋になると言う。
そんな人達に、
もう
いいのですよ
と言うのが僕の仕事、なのだけれど。
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