優しい仕事、冬/AB(なかほど)
 
てくれた。





藻採り雪の近づくと

炉端できゅうきゅうと

支度をする祖母は

乙女に変わる

潮の滲みて来ないよう

きゅうきゅうと

生憎の戻り雪になるも

膝をさすりつつ

華の起つ藻場

の向こうを眺めている





まごころ屋が閉店になる。
やっていけなくなったのではなくて、もう後
継ぎができたのだ、と言う。けれどこの町の
誰も、その後継ぎのことは知らない。

まごころ屋は、壊れたオルゴールの小箱を眺
めながら、今度は、別離のテープの切ったり
貼ったり屋になると言う。

そんな人達に、

もう
  いいのですよ

と言うのが僕の仕事、なのだけれど。







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