マツモトキヨシ/たもつ
 

しばらく入荷しないと言う
胸のプラスチックの名札に
ナカザワススム、とある店員が言う
ススムは僕のじゃない
ナカザワはもっと僕のじゃない
ナカザワススムはススムは弊社では取り扱っていませんと言う
ナカザワは聞いたこともないと言う

他の店舗を回ろうと思い立って
ヨシダリエに電話する
ヨシダリエはまだ眠っていた
昨晩遅くまでマツモトと喧嘩したそうだ
キヨシとは喧嘩しなかったそうだ
眠そうなヨシダリエの声を聞いているうちに
マツモトもキヨシも本当は必要ないことに気づき
おやすみ、と言って電話を切る
僕が本当に必要としているのはヨシダリエだ
リエもいらない
ヨシダもいらない
本当に欲しいのはヨシダリエだ
ヨシダリエがあれば他には何もいらない

商品を並べるススムの手が
マツモトキヨシに美しく馴染んでいる
天気予報のとおりならば
今夜は都心でも初雪が観測される
初雪に馴染んでかじかむススムの手を思って
うらやましいと思った


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