思椎の森で化石になってしまった/こたきひろし
 

じっと待っていた

看護婦がやってきて
奧さんまだまだ時間かかりそうです。いったん帰って貰えませんか。何かあったら連絡しますから。
と言われたので
俺は素直に頷いてから質問した
いつ頃産まれますかね?
看護婦は答えてくれた
それは分かりません。奧さんと赤ちゃんしだいかな?
冷静な対応だった

俺は産院から出て狭い駐車場に停めた車に乗り込んだ
内心はほっとしていた
極度の緊張から解放されて安堵したからだ

結局男には何もできない
ひたすら待つ以外に方法はないのだ

公園の駐車場に巡回のパトロールカーが入ってきた
他にも数台が停まっていたが
迷う事なく俺の車の横に停めた

すると驚いた事に
他の数台がいっせいにエンジンをかけると
ヘッドライトをつけて逃げるように駐車場から
出ていってしまい唖然とさせられた

降りてきた警官が俺の車の窓ガラスを叩いた

俺は化石になってしまったみたいに
固まってしまった

固まってしまった

戻る   Point(3)