自画像/ミナト 螢
 
春の吐息は明るくて迷う

風が散らした花びらの上に
座る場所もなく青い空を立て
ベンチにするなら絵を描きたい

眩しい景色に負けているのは
心を脱いでも走らないことを
覚えてしまった大人の体で

白いキャンバスに足を浸すと

踏んできた絵の数だけ
飛び散った爪を集めても
足りなくなるから

溜め息を吐く前に愛してよ

抱かれる手になりたかった私は
ピンクで縁取る指の先まで

近づいてくる桜前線が
冷たい背中に視線を送ると

永遠を射止めたように眠る
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