ホテルの前に座っていた男/番田
アイフォンを買っては売ってばかりいた
そして 手に残された機能の記憶
そして いくらかのはした金
ベトナム旅行の写真を僕は見ていた
あの日僕はフォーを食べていた そして
まだ 買ったばかりだった財布をすられた
油断ならかった人々 そして
一見親切そうだった あの人の笑顔を思い出す
だけど やけに高い粉で
入れた土産のコーヒーは美味しかったものだった
それを 飲みながら 一人
午後の通りの喧騒を見つめようとしてみたりする
ああ あの人は今 どうしているのだろう
ホテルの前に座っていた男 彼は
部屋に案内はしてくれたが 僕の出た後で
部屋の鍵を開けていったのかもしれなかった
戻る 編 削 Point(1)