四百年に一人の少年/st
少年のやわらかく
細い指先に宿るのは
老獪で強豪な指し手
不釣合いなやさしい眼で
駒を狩る
序盤は研究で速く指し
中盤は一時間余の長考に
沈むこともある長考派
質駒はもちろん
敵陣にある
王を除くすべての駒を
自分のものとした時の
可能なあらゆる筋を
読んでいるとしか
思えない正確さ
左手にもつ扇子の音と
上半身を揺り動かすリズムで
時々お茶を飲みながら
読みふける
少年の最も強い終盤は
華麗に彩られる
ビクトリーロード
終盤の詰み筋を見逃すことは
ほとんどない
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