栗への讃歌/帆場蔵人
 
くお前たちを
美味しく頂こうと
励んできたのだ

祖母が口をひらく
昔、偉いお坊さんが
念仏の礼にもらった
焼き栗を地に蒔いた
その栗は一年に三度花咲き
三度実がなるのだという
夏から秋にかけて
三度栗はたくさんの
恵みを里にもたらしてきた

祖母が里の秋を歌う声が
里山に響き渡る、南方に
出征した父の帰りを待ちながら
栗の実を煮ていた親子は
もう母はなく子は老いて
栗を拾っている

遥か昔から
繰り返されてきた
その動作を真似て
孫も栗を拾う

三度と言わず何度でも
栗よ、これからも人はお前を
拾い続けるのだ
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