かちり/
松本 涼
かちりと音がして
空が切り替わった
新たな空に住むものたちが
降らせる粒子に僕を絡めると
舌の上のオブラートのように
僕が僕の輪郭だと
思っていたものが溶け始めた
それが例えば覚えたての眼の中で
起きているだけの事柄だとしても
次のかちりが聴こえる前に
大きなドーナツを頬張っておこう
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