夏の終わり/帆場蔵人
けがそれを知っていますが、雪の子はしんしんと口を閉ざして、降り積もるだけです。秋に落ちた葉のうえをあるいた春は行方知れずできっとあの竹林でぶらぶらゆられています。あれは泡になるまえの言葉たちです。
着信音の陰に言葉が隠れている。夏の終わりを数えていると煙草の灰があかあかとしながら夜に落ちていく。ベランダの手すりに立ってぶらぶらゆれて(着信音は縄の軋み)首釣り台から笑ってみせる、なんて歌っていたお前は竹林でぶらぶらしてる。もうすっかり景色に馴染んだお前の眼はただの鏡だから、ぼくはぼくに怯えているだけだからもう言葉にして泡に変えてやるべきだ。そのとき着信音は言葉に変換されていくのだろう。そしてすべて泡と記す。
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