坂だらけの街/ただのみきや
大脳皮質の蟻
岩場の苔を歩きまわる蟻一匹
ジャムの空き瓶に捕らえ
曇り空の蒸し暑い日
円周率を拾いながら
わたしは坂を上り切って立ち眩み
どこまでも壜は転がって加速した
すきとおった密閉
めくるめく天地の回転移動
蟻は来世を想う 間延びした
時間は反物(たんもの)みたいに絵柄を展開させ
猫と少年
坂の多い港町のひび割れた路上の真中寄り
今朝の空と似たうすい灰色の猫がまどろんでいる
腹ばいになって前足を人みたいに傾いだ頭の下
時折 車が通ると慌てるでもなく ふと顔を
上げて 確認し また目を瞑る
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