桜/瑠音
まだ咲き始める気配も無い花が
明日の雨で散ってしまうかもしれない
咲けないまま
散ってしまうかもしれない
頭に浮かんだのは
そんな事でした
出来ればあなたの旅立つまでには
あの坂の桜を
私の運転する車で
見に
行きたかった
わがままを延々と続けた3月
まだ冷たい水をつかんで
どうしようもないほど名前を呼んだ時は
どうしようもないほど
不毛で
無駄な事だと
あなた以外の人が笑ったけれど
あなたはゆっくりと手を温めてくれたから
全てが
満足だったのです
桜が
散った後ぐらいにはおそらく
会いに行ける
会いに行ける
そのときにはあの
あなたが見ることのなかった桜を
写真にとって
写真にとって
どうしようもないほど名前を呼んで
そうして姿をつかまえる
最後だからと
つかまえる
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