蠅/田中修子
老人そして小さな子を見落とし続けたあなたの眼窩のそこにある脳髄/は/空っぽで楽し気に戦を殺し続けている/空虚の根底に辿り着くまでどこまで遡ればいい/殺戮の宴はどこにあるか/あらゆる語り部を聞き落したその耳を私のこの丈夫な歯で切り落とすまでお待ち/羽
隆々と盛り上がるしなやかな筋肉の若者のままであればよかった 若いころの肩甲骨は美しかった 天上にすら白い家を持てたであろうに 切り落とされた耳そして羽の音は 鳴る 銀の蛆が私の体にたかる からだ
(数瞬の闇 きらびやかに輝き照り付ける白の星 今日の空は何色だ 紺か黒か赤色香 そのあからさまな光明のうちに 子を産んだ裸体を照らせ 原始の太陽は
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