バケモノ語り/立見春香
 
あざとく
悲しみの赤に染まった
涙を湛えた瞳、
だったりすることが
耐えられなく、恥ずかしい


そんなことを
知らないバケモノは
バケモノの冷たい息を
植物園の温室の
最後の憩いを言葉にして
わたしを搦め捕ろうとする


(けど
(だれが冷たい自由を知ってる?
(愛が冷える瞬間のあの音を?


醒めた目をした、バケモノメ

そんなに変わらずに
一途に一人のため一つの幸せを
求めるの?

見透かされ、嘲笑われた
闇の世界に瞳を置いても
闇の中の微笑みは忘れずに
生きていくのだろう


(ふつうの人として
(生きるんだけど
(スーッと
(ほおをつたう、あたらしい涙は
(白く、やさしく、すこおし、
(あたたかい、色をしている
(気もするけれど




戻る   Point(5)