夢遊/
両性具有
湖がふるえていた
さびしい さびしい と
だからぼくは
君が残した爪痕をさらに抉って
その傷口から赤い鱗の鯉を
そっと放ってやった
かすかに海水の混じるそこで
長くは生きられないかもしれない
けど
死んだら死んだで
また新しいのを放ってあげる
森がざわめいていた
たのしい たのしい と
だからぼくは
左手の指の一つを食いちぎり
忍び寄ってきた群れのなかへ
そっと放ってやった
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