得体のしれない不安と得体のしれてる不安が/こたきひろし
起こらなかった
今年も来たよ
鬱陶しい雨が降り続いていた
抱えている得体のしれてる不安に蝕まれながら
黴がはえてくるような気分になっていた
まるで空虚な毎日
それでも仕事に出掛けなくてはならない
働かなければお金を手で触れなくなる
だからお金の収集によねんがないんだ
お金は人間の生殺与奪の力を持っているからね
いったい口は言葉を話す為にあるのか
食べる為にあるのか
それとも愛する異性の柔らかい皮膚を舌で舐める為にあるのか
もう
訳がわからない
得体のしれてる不安が蛞蝓のように這っていて
戻る 編 削 Point(4)