なつぐも 他二篇――エミリ・ディキンソンの詩篇に基づく(再掲)/石村
 

「うつくしいものでいたかったの」

「そう じゃあ ぼくらはともだちだ
ぼくはまごころをまもるためにしんだんだから
おんなじだよねえ」

そうして にたものどうしのふたつのお墓は
まいばん しずかにかたりあいました
ながいながい しあわせなときがながれ
やわらかいみどりのこけが すこしずつふえ
わたしたちのくちびるを とざすときがきました

「さよなら げんきでね」
「さよなら ありがとう」

そして ふたつのくちびるはきえ
ふたつのお墓にかかれたなまえも
みえなくなりました


{引用=I DIED for beauty, but was scarc
[次のページ]
戻る   Point(18)