なつぐも 他二篇――エミリ・ディキンソンの詩篇に基づく(再掲)/石村
す
「うつくしいものでいたかったの」
「そう じゃあ ぼくらはともだちだ
ぼくはまごころをまもるためにしんだんだから
おんなじだよねえ」
そうして にたものどうしのふたつのお墓は
まいばん しずかにかたりあいました
ながいながい しあわせなときがながれ
やわらかいみどりのこけが すこしずつふえ
わたしたちのくちびるを とざすときがきました
「さよなら げんきでね」
「さよなら ありがとう」
そして ふたつのくちびるはきえ
ふたつのお墓にかかれたなまえも
みえなくなりました
{引用=I DIED for beauty, but was scarc
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