夕日の約束/立見春香
 
なにに触れたい
どんな言葉にして告げたい
その言葉に夕日は驚くほど
ウブなふりをするのでしょうか?

すっかりと
夕日は街を歩く人の影を
針の線にし
けれどようやく生き返った人はみな
やって来るピンクの夜を
期待に胸踊らせて
恥じらいつつ待っています

新しい朝日に
なるために
布団に入ったおひさまを
安らかに眠らせるために
代用品として夜空に浮かぶ
感情定まらない青白い月が
その夜かぎりの子守歌を歌うのです

この街を歩きます
今日は一日
ずっとささくれだっていたのです

街ゆく人が見上げた空に
満月なら満月が
三日月なら三日月が
新月なら
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