亡霊の林檎、湯上がりの空/Seia
ームーンは
また今日も見られない
氷雨の夜が明けたら
亡霊の林檎が実るだろう
遠い国のおはなしだったとしても
想像の範疇で腐っていく果実
再翻訳された日本語みたいに
しゃべってほしい
その方が疲れにくい気がするから
関わりや環境が輪郭をつくるなら
わたしに中身などない
かたちを保つための綿が詰まっていればいい
刑事役と被疑者役にわかれて
自問自答を繰り返しているだけでよかった
坂道をひとりでに登っていく
ボールの行方を辿っていつの間にか着いた街
肩に手をあてられて笛が鳴る
職務質問の合図に
剥がれ落ちる意識があった
戻る 編 削 Point(1)