亡霊の林檎、湯上がりの空/Seia
 
ームーンは
また今日も見られない

氷雨の夜が明けたら
亡霊の林檎が実るだろう
遠い国のおはなしだったとしても
想像の範疇で腐っていく果実

再翻訳された日本語みたいに
しゃべってほしい
その方が疲れにくい気がするから

関わりや環境が輪郭をつくるなら
わたしに中身などない
かたちを保つための綿が詰まっていればいい

刑事役と被疑者役にわかれて
自問自答を繰り返しているだけでよかった

坂道をひとりでに登っていく
ボールの行方を辿っていつの間にか着いた街

肩に手をあてられて笛が鳴る
職務質問の合図に
剥がれ落ちる意識があった
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