無人島にて/服部 剛
 
無人島の浜辺に
置き去りの切り株を運び
堤防に置く椅子にして
腰を下ろす

竿を手に
糸をしゅるる――と無心で放ち
午後の凪いだ海の水平線に
目を細める

阿呆らしい日々は
遥かな街に置いてきた

海の風景の一部になり
世界にひとり、私は待つ
釣れようが
釣れまいが
幻の魚を夢に見て

海の静寂(しじま)に糸を垂らす









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