マーチング・マーチ/大村 浩一
 
 季節の名を呼ぶな。白紙のような、はじまりのような、実際にはでたらめの
地誌。そんな緯度にバビロンは無いぞ。想像上の怪物、あなた。私はすぐに忘
れてしまう、砂粒のようで、出かけようとしている、広がる3月朝のデジタル
マップ。張りつめた、雪の消えた、はじまりのような。塵芥の無い、スカンジ
ナビアのイメージ。
        長城のうちがわで、囲まれた遺物が反響する/風化する。私
は手に負えない。積み上げられた本はそれら自体も砂粒のようで、読んだもの
も、読まれないものも、読んだのに忘れたものも、読まれないまま忘れられて
しまうものも、砂山の地滑りのように裾を広げながら、あなたは裾を広
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