シベリアン・スイートハート /atsuchan69
 
の、
華麗なる春に咲く花のイメージ
ポトフの煮える鍋の湯気に匂い立つ、
あたかも虚ろな夜に口ずさむフレーズの
蜜のように甘い「降伏」のメロディ‥‥
まるで泣き止んだ海が穏やかに奏でる
夜明けの潮騒みたいに、なぜか 胸はときめく )))

いつか母である国家に裏切られた日、
子らを抱いて流離う明日なき家族たちが
やっと辿りついた夕べの団欒に
どうにか分配する皿の 日ごとの糧は、
きっと誰かの命と引換えに
今日も赤いビーツの色に染まっていた

やがて皮一枚の肌につきまとう
奪われた体温の黒いアラブの生贄の血、
古文書の数行を成就させるべく
暗い研究室に据えられたバス
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