猫野事務所/やまうちあつし
 
近すぎる
奴らは遠い昔に
人間と重大な契約を交わして以来
その命運をともにするほか
選択肢がなくなったのだ

けれども猫は違う
人間との共生を続けているように見えて
完全にその配下に入ったわけではない
犬と違って繋がれていないのがその証
私らはいつでも人間のもとを離れて
別の霊長に付き従うことを
選ぶことだってできる

犬たちがその不可能性によって
種の存続を維持しているのと違い
私らはあくまでも可能性として
現在の存在様式を選んでいるというわけだ

長い演説の間も三匹の視線は
私の持参した鰹節から動かなかった

面接はその後
いくつかの実務的な質問に
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