夜の中/為平 澪
地面を昼間に仕立て上げるころ
夜に泣いていたのは
もう赤ちゃんではなく
おばあちゃんだった人だということが
明るみに出ていた
あのトタン屋根の二階の火事も殺人事件も
帰る頃には交番の手柄になっていたのに
入口の〇は更に赤い灯を点して浮いていた
巡査は濃いメイクの顔の女と旅に出た、と
掲示板には書いてある
行き先はゴミ置き場の男が指示したらしい
私はカーブミラーから
必要な記憶を取り出すと 家路を急ぐ
頭に貼りついていた星が流れ始める
流星群の日は人がいっぱい死ぬのかなって
一緒に空を眺めて星になった友人のことを
下から見上げる
大きなドラムカンに何かを燃やし続けている家の畔の
大きな橋を渡ると 私の体は五体満足になっていた
坂の上の三叉路の三体のお地蔵さまに
お菓子を供えると
私の家の入口が開くのだという
*
私に名前は 未だない
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