波兎の石塔/田中修子
 
くらいくらい 荒野につくりあげた
復讐の塔に閉じこもり
「ひとりだ」と呟いたら
はたかれた

ひたすら 喪いすぎたのだろうね

青い夕暮れに細い声でないてさ

耐えられないわたしを わたしは わたしが

ゆるされることをのぞみもしないで

冷やかな風 一瞬の朱金にうつりかわり
こあい濃藍こわい怖い、夜がきて

なにをしろしめす

(ただ、
いつかみた黒い海の波音を
ふさいだ耳にばかり
つむった瞼には
想い出ばっか)

波うさぎが跳ねているよ、

とおい とおうい
北の海 も 南の海 も
波うさぎはあるだろう

こゆびをわたしにおくれよ 
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