Elegy #2/
 
──幻詩の果てへ。

 若い詩人のかさぶたは、0と1に濡れていた。端からゆっくり剥がしても、爪をたて一息に削っても、いつも同じ、0と1が滴るかさぶたを、うたうよりも速く書き写し、有事の際には、またたきよりも素早く消し、時に、消したという現実さえも消してみせた。
 そうして、かさぶたから0と1を延々とつむぎ、織り上げたポエムは、詩人がマスクを渡し忘れた日を境に次々と病に倒れた。詩人は悲しみ、慌てて蘇生法を調べ試みるも、誰一人として蘇らなかった。

 私はあの病原と詩人のマヌケさに感謝している。もしも、細胞をひとかけらでも公海に浮かべていたなら、再び釣り上げ、在りし日の姿を詩人に晒すことが出
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