八月の食卓/Seia
剥いたあとの茄子の皮をぺらり、ぺらりと、
指先でつまんでは捨てては夕暮れて。
雨の匂いを連れてくる獣が庭先から見ている。
サラダ油が騒がしくなる。
菜箸の先で茄子をころがしながら、
はじける音が夕立と混ざり合う。
もうすこし、
遊んでいたかった。
砂利を噛んだ記憶。
タオルで額の汗を拭う。
近くに公園のある家でよかった、と、
食卓の場で聞いたのは、
今日とおなじように、
夏が去っていく気配がした日。
しいたけのくすんだ香り。
ジュ、ちいさく鳴って、
焦げた茄子がだしつゆに浸かる。
ネギを買い忘れていることに気づいて、あわてて、考えて、
野菜室の底
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