「祈りの残骸」/桐ヶ谷忍
 
ここは寂れてしまったのではないか
祈ることは
かなしみを直視することだから

鳥の巣はカラだった
無事に巣立ったのだろう
来年またここへ帰ってきたら
この場に満ちた祈りの残骸を
餌と一緒にわずかでも飲み込んで
また飛び立ってくれるといい
私の遣る瀬ない想いも含めて
人々が祈って届かなかった先の
天へ

割れたステンドグラスから西日が射して
埃のつもった床に
ゆらぎのうつくしい模様が落ちている
それはまるで
祈りのかたちのようだった


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