西日/為平 澪
ついて西日が照らしたもの、
取り上げていったもの、
一区切りつけたもの、
誰かの一日が沈み 何処かで一日が昇っていく
その境目のベンチに腰を下ろし
宛てのない悲しみについて思案する
陽に照らされた私の左横顔は
顔の見えない右横顔にどんどん消されていく
ツバメがためらわず巣に帰るように
カラスに七つの子が待つように
みんな家に帰れただろうか
ヒバリは鳴き止み アマガエルが雨を呼ぶ頃
暮れた一日に当たり前たちが
安堵の音を立てて玄関の扉を閉めていく
生きる手応えと 生ききれなかった血痕を吐き
私もまた鳥目になる前に
宛てのない文字列を終えなければ
影絵になって消えていった人に
「いってきます」でもなく「さよなら」でもなく
「またいつか・・・」と
その先の言葉に手を振るだろう
寂しさを焦がす赤い涙目の炎に射抜かれて
私も自分の故郷に帰れるだろうか
家族と仲良く暮らせるだろうか
蜃気楼に揺らぐ巨大な瞳が桃源郷を作り出し
酷く滲んで 私を夕焼けの下へと連れていく
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