西日/為平 澪
 
一日の終わりに西日を拝める者と 西日と沈む者
上り坂を登り終えて病院に辿り着く者と そうでない者
病院の坂を自分の足で踏みしめて降りられる者と 足のない者
西日の射す山の境界線で鬩ぎあいの血が
空に散らばり 山並みを染めていく
そこから手を振る者と こちらから手を振る者
「いってきます」なのか、「さよなら」なのか

西日の射す広場で押し車を突く老いた母と息子の長い影を
またいでいく、若い女性の明日の予定と夕飯の買い物の言伝が
駐車場から響いてくる

私の額には冷えピタ
熱っぽい体にあたる肌に感じる暮れの寒さ
胃の中に生モノが入っても消化していく胃袋
そういうものについ
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