二つの引っ掻き傷/金槌海豚
 
首を左に小さくかしげ 閉じた瞼の毛細血管に透かして

 − あなたはいつも気まぐれに人を愛したり、出て行ってしまったり
 − あなたが受けた傷の分だけ、貴方も誰かを傷つけたのよと
 − いくら私が言ったところで
 − ついさっきまで眼を開けて私を見つめていたと思ったら
 − 今はもうそうやって、気持ち良さそに目を閉じてしまっている
 − そんなら、私はあなたの前を横切り 飛ん行かせてもらいましょ
 − 細長い足を後ろに放り投げ、白い翼をヘの字に曲げて

鈍角に捻じ曲げられた陽光が 琥珀プリズムで二本に割れ

 − アンタそこの部屋の入り口の扉を見れや
 − そこに俺の方を
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