歩道橋の詩/ミナト 螢
 
あなたのシャツの裾を掴んだまま
どこかへ連れ出して欲しかったのに

コーヒー買って来てと頼まれて
仕方なく手離すシャツの形が
風で膨らんで羽根に変わった

あなたの背中が消えないうちに
人混みの上の空を歩くと

白い羽根で雨雲を切り裂いて
光の天井を背景にした
この場所で記念写真を撮ろう

私たちずっと側にいるけれど
手を繋ぐ理由が見当たらなくて
あなたは帰ってしまうのでしょう

思いが二つまだ釣り合わずに
街灯の明かりに守られながら

呼び止めるようにコーヒーを渡し
私の方が先に飲み終えたら
あなたはただの猫舌なのかな
それとも夜を感じているのかな
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