帰り道の詩/ミナト 螢
 
ピアノのレッスンをサボった後の
指は硬くて心は頑なで

いつもの道とは違う歩き方
さよなら僕の練習スタジオ

メロンパンひとつギュッと握りしめ
食べこぼしをずっと落として来たよ
夕陽が出ていて綺麗じゃなくても
この景色をまだ忘れてはいけない

少しだけ肩を下げた姿は
自由を選んだ喜びよりも
裏切りを知った寂しさのようだ

今までピアノに捧げた時間が
不協和音になって崩れるなら
何者にもなれなかった僕を
許してくれるのは誰なんだろう

赤とんぼを指に乗せられた日は
僕もこのまま地上を離れて
空に一線の列を作って
緑にとまれば森が聴こえる
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