脱ぎ捨てて/若原光彦
むどころかせいせいするまで
あやまちおかしに行っといで
わたしのことはいいからさ
お前に慰めてもらうつもりはない
二度と戻るかよ馬鹿
と怒鳴ってまずちんぽこが出ていった
それから荷が降りるたぁこのことですな
とご挨拶して肩がころころ遠のいていった
毛がばっと四方の物陰へ失せ
歯は爪を引き連れて風に舞った
唇は背骨の胴上げにさらわれていった
神経はなぜかわざわざ他を押しのけた
みんなみんな離れていった
心臓と脳だけがぷるぷると残った
おまえらも行っていいんだよ
とわたしは言った
やさしく発したつもりだった
どこへ
と片方が吐いた
なぜ
ともう片方が
[次のページ]
戻る 編 削 Point(2)