『悪魔の舌 PART2』/ハァモニィベル
うな人が、何をしにこちらへ?」
「ええ、不思議な伝言をもらいましてね。この街で
<羽の消失がもたらす花の喪失について>講演をしに来たのです」
私がそう答えると、パブロフの蚊の全身に一瞬恐怖がはしったのが
こちらにはっきり伝わってきた。
「そうですか、それはそれは。特にわたくしに取りましては、Kissは重罪になります」
そう言ったきり、パブロフの蚊は、悲痛なほど、暗く俯いて黙り込んだ。
一言もしゃべらなくなったパブロフの蚊をそこに残し
脳をすべて食べられないうちに、私は、脳を食べる温泉の湯から出ようとした。
すると、そのとき、
パブロフの蚊は、突然、私を引き止めて、こう言った。
「いいですか、気をつけて下さい。この街で・・・、この街では、
一言たりとも、美しいものを美しいと言ってはいけません。
美しいものを美しいと言った途端、あなたは死にます。いいですか
くれぐれも、注意なさって下さい。くれぐれも・・・・」
私は、その夜、もっとも美しい夢を見た。
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