二月からのこと/山人
浮いている
未だ目覚めない命の群落は音を立てていない
傍に立つ電柱の静けさとともに
小池にそそぐ水の音が耳から浸透してゆく
夜半に目覚め再び眠りに落ちて
めずらしく夜が明けてから外に出た
やわらかい空気が皮膚に触れる
包まれていると感じる
あらゆるものに理不尽さを感じながらも
四月に抱かれるように
すこしだけ腑に落ちる
新しい物語のために四月はおとずれ
感傷は三月に見送る
夢はまだ終わったわけではないよと
君に言いたい気がする
*
物語のはじまりにも慣れ
風の速さも感じられるころ
あかるみを帯びた月がはじまる
大きく風を飲み込む鯉が
初夏の結
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