n番目のおかゆ/Seia
ているだけなのだろうともおもう
今まで食べたトマトの数も
失くしたリップクリームの本数も
USBの裏表を指し間違えた回数も
人生のイベントとしては
プリントアウトされなかった
ハードディスクの奥深く
フォルダ階層の底で
音も立てずカウントされていくのだ
とおくで
始発列車の音がする
結局眠気はこなかった
枕と首の間から
水分子が蒸発していくのがわかる
静かな熱は静かなまま
ゆるやかな下り坂にさしかかる
今日一日
どうやって過ごそうかと考える
固まってしまった筋肉が笑いながら
上半身を起こしてみる
どうせなら
記憶に残るような
フラグを立ててみたいものの
この身体ではどうにも
人生で一番美味しい
おかゆをつくることしか
いまのところ思いつかない
冷蔵庫に梅干しでもはいっていれば
梅がゆにするぐらいは
許されるだろうか
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