n番目のおかゆ/Seia
解熱剤はきかなかった
静かな熱
夜が明ける手前
雲の形が認識できるまで
寝返りを打つ体力も残っていない
生まれてから
今さっき
窓にぶつかって落ちた
カナブンのことまで
順番に思い出していた
そのうちに
眠れるかもしれないと
お湯を入れすぎた
カップスープくらいの期待を込めて
薄い記憶が仇になろうとは
今まで考えもしなかった
圧縮してしまったら
数ヶ月で事足りてしまうのではなかろうかという
イベントの少なさ
昨日食べた
ビーフシチューとバゲットの
味と匂いの解像度を上げて
丁寧に思い出さないと
もうそろそろカナブンが飛びだしてしまう
忘れてい
[次のページ]
戻る 編 削 Point(1)