リンゴの何を知っているか/ブルース瀬戸内
大賢者のごとく振る舞って
残るものは一体何なのかと
考えてみたくもなるのです
迂回戦略を採用することで
さらに多くのリンゴたちと
出会えるのなら話は別です
私の好物はリンゴ一択です
リンゴあってこその私です
仮想世界を堪能していても
時々仮想リンゴを目の前に
記憶の中のリンゴを想って
現実世界に引き戻されます
少し寂しく嬉しい瞬間です
あの食感は現実でこそです
リンゴの何を知っているか
分からなくなる時もあって
思わずリンゴに訊きたくて
かじるのを待ったりします
世界の何を知っているのか
分からないことと違うのか
同じなのかも分かりません
リンゴが目の前にあります
リンゴが目の前にあります
現実リンゴだと思いますが
仮想リンゴの可能性もあり
それをはっきりさせるため
勝手に別のことも仮託して
かじりまくってやるのです
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