ざぁだ・・・/よーかん
・」
マフラーをした老人がたずねる。
これはなんだと訊ねているようだ。
「だいじょぶだ。だいじょぶだ。」
老婆がコップをさらに差し出す。
「ざぁだ・・・」
老人が両手を脇の下にしまい顔を横に振る。
「だいじょぶだ。だいじょうぶだ。」
老婆が老人の後頭部を掴む。
唇にコップをあて傾けようとする。
「にがいど、にがいど」
老人の視線がワタシを捕らえる。
老人の顔がクシャリと歪む。
笑顔なのか。
歯がない。
舌の奥に暗闇が見える。
「ざあだ・・・」
「インスタントコーヒーだインスタントコーヒーだよジイさん!」
叫びながら跳ね起きた。
「ああ、だよな。」
おしまい。
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