誰一人としてその名で私を呼ぶことが永久にないとしても/Lucy
私はしあわせ、こんな程度でよかったとつくづく思っているよ。これ以上ひどい状態にならないことだけを願っているよ。自分の持ち場で、与えられた役割を精一杯にこなすことに全力を注ぎ、ほかの誰にでもできる仕事を、最大限誠実に、マニュアル通りに何とかこなして、たまにはうっかりして失敗して落ち込んだりして、へとへとになって一日を終える。そうして生きていくためのいくらかのお金を手に入れる。それだけじゃダメなの?
くたびれた帰り道ほど夕焼けが目に染みるんだ。なんだか泣きたい気持ちで胸がいっぱいになるそんな時、生きててよかったって思えるようなそんな時、もう詩なんて書かなくても私は生きていられるのかなって思うとき。たとえば、恋なんかしてなくたって、何の変哲もない風景が、雨上がりのようにキラキラ透明に光ってたりすることがあるんだよ。別に私が詩人でもなんでもなくたって・・。
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