冷たい穴/Seia
 
せられて
左から右へ流れていく
赤く色づいたイチゴ

手元に流れ着いた完成品を
掲げたその向こう側で
選別は行われている
いる
いらない
いる
いらないの繰り返し
そのなかのひとつに意識が
吸い込まれていく
近付いてくる手
観察される身体
ひかる汗
ばらばらになるパック
平謝りするわたし

ねずみにかじられたイチゴがステられる度
自分がステられているような
感覚になった
いたちの爪痕残るイチゴが投げられる度
自分が投げられているような
感覚になった

コンテナいっぱいの既成品と
ダンボールいっぱいの失敗作を
一緒に載せたトラックが
カーブを曲がって
見えなくなった

落ちるヘルメット
ぎっしりと詰まった疲労感
はやくわたしは帰りたいのに
何度かぶろうとしても
そこにはただ
冷たい空気があるばかりで
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