リリカルな私/神坏弥生(涛瀬チカ)
リリカルな私 涛瀬チカ改め神坏弥生
例えば、白と黒の鍵盤に向かって
白から黒へ黒から白へと半音ずつ上げてゆきながら
サティを弾いてみる
午後に明るい日差しがさしてカーテンが
膨らんで揺れている
軽やかなリズムに乗って
オルゴールの踊り子が
ドレスの裾を膨らませながら踊り続ける
昼、食したアコヤ貝に一粒の真珠をのせて
ころころと転がしてみる
草にのった露のように沿ってゆく
一粒の真珠
誰かの涙だったようだ
私だったろうか
それとも彼だったろうか
記憶の中で想い出となり
宝石箱の中にしまわれる
私が彼を初めて見たとき
彼は無表情な横顔を見せていた
私
[次のページ]
戻る 編 削 Point(3)